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2020年9月30日
コラム
新型コロナウイルスの蔓延により、会社オフィスに出勤せず、自宅やその他の場所での勤務を認める「テレワーク」が導入されるようになっています。
通勤に費やしていた時間がなくなり、自宅で柔軟に勤務できるようになるなど、感染予防にとどまらず、多くのメリットがある勤務態様であると思います。
今回は、会社が従業員にテレワークを認めるに当たって、整備すべき諸規定について解説します。
「テレワーク」といっても、別に定めを置かない限りは、就業規則上の労働時間に拘束されます。
従業員は家にいるからといって、始業終業の時刻を守らなくてよいことにはなりませんし、当然、労働時間は労働に専念する必要があります。
また、会社側も、テレワーク時に時間外手当が発生するような場合には、これを支払う必要があります。
とはいえ、テレワークの場合には、出勤し仕事をしているかどうか目で見て確認することはできませんので、出退勤時の報告の方法について、定めておく必要があります。
PCを用いた勤怠管理システムを利用し、これを社外でも利用できるというのであれば特に問題ありませんが、そうでない場合には、出退勤時について、労務管理の担当者等を決め、メール、電話等での報告を義務付ける必要があります。
また、時間外の勤務をする場合には、これを自由にさせることなく、担当者に対して同じように報告をさせ、担当者の承認を得てから実施することとするなどの規定の整備が必要でしょう。
当然ですが、テレワークであることを理由に給与を減額することはできません。
また、自宅を使用する場合には、労働時間中の水道光熱費、通信費の負担はどうするのかという点を決めておく必要があります。
水道光熱費については、労働時間のものなのか私用時間のものなのか明確に区別することが難しいので、従業員負担とすることが多いでしょう。
通信費については会社貸与の情報機器の使用のみ認め、私物の情報機器の利用は認めないのであれば、通信費を会社が負担することになるので、費用負担の問題は出てきません。
私物の情報機器の使用を認める場合であっても、自宅Wi–Fiの使用料は月額いくらと定額になっていることが多く、必ずしも通信量に比例した料金設定であるわけではないので、従業員の自己負担又は通信手当として固定の金額を支払う、としているケースが多いかと思います。
また、通勤手当の支給方法についても、取扱いを決めておく必要があります。
就業規則上、通勤手当が完全に実費支給(実費×通勤日)ということであれば問題ありませんが、実際の通勤実態にかかわらず各従業員の通勤距離に応じて、固定の通勤手当の支給としている場合には、そのままの取扱いでよいのか、検討が必要です。
テレワーク実施中に通勤した場合には、その通勤実費のみを通勤手当とするのが明確ではありますが、会社の規模によって、実際に給与計算を行う側の事務的な負担が重くなるかもしれませんので、会社としての取扱いを決める必要があります。
労務管理、賃金計算の観点とは別に、テレワーク時の情報漏えい対策のため、テレワーク時のパソコンなどの端末の利用指針も策定する必要があります。
テレワークのために、従前使用していなかった会社所有の古いパソコンを使用したり、場合によっては私物のパソコンが使用されたりするなど、セキュリティ対策が十分でないと思われる端末で業務上の情報が取り扱われるケースが増え、情報漏えいの危険性が高まっていると考えられるからです。
会社貸与の端末の使用のみを認める場合であれば、会社側でどの端末を誰が使用しているのが台帳等を用いて整理し、許可なくソフトやアプリをダウンロードしないこと、ウイルス対策ソフトを常に最新のものに保つこと、情報漏えいの可能性があれば担当者にすみやかな連絡を義務付けること等、テレワーク実施中の従業員に対し、注意喚起を含め、行動指針を示すことが必要です。
やむを得ず、私用の端末を使う場合には、業務に使う端末の届出をしてもらった上で、セキュリティ対策を万全にすること、公共のWi–Fiにはつながないこと等の定めを置くことも検討する必要があります。
この点については、総務省や内閣サイバーセキュリティ―推進センターがガイドライン等を公表していますので、会社の規模や実際の運用等を踏まえた上で、会社の方で規定の整備を進めておくことが安全でしょう。
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