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◎弁護士コラム◎法律用語とマスコミ用語

2020年5月22日

コラム

最近だとカルロス・ゴーン被告人の件が思い出されますが、世間の耳目をひく重大な刑事事件が発生すると、テレビ、新聞等でマスメディアが盛んに報道することがあります。

被害者側に対する過剰な取材、報道については批判があるところではありますが、今回はその問題ではなく、法律用語とマスコミ用語の違いについてお話しします。

 

1 「被告」と「被告人」

マスコミ報道において、「被告人」という言葉が使われることはほぼなく、通常「被告」という言葉が使われています。

しかし、法律用語では、この二つは全く違うものです。

 

法律の世界では、「被告」というのは、民事裁判における概念です。

民事裁判で、訴えを起こした方が「原告」、訴えられた方は「被告」となります。

例えば、金を払えと請求する方が「原告」、何かの理由で払っていない方が「被告」です。

民事裁判における「被告」という言葉には、「訴えられている側」という意味合いしかありません。

 

刑事事件において、マスコミが「被告」と表現する人物は、法律の世界では「被告人」と呼ばれます。

刑事事件において訴えを起こす(=起訴する)のは検察官ですので、「被告人」というのは、犯罪の嫌疑があることから検察官に訴えられて正式裁判にかけられている人、ということになります。

 

このように、「被告」と「被告人」には明確な違いがあるのですが、マスコミ報道ではその区別があまりされておらず、刑事事件における「被告人」のことを「被告」と表現しています。

 

2 「容疑者」と「被疑者」

「容疑者」という言葉は、法律の中には出てきません。

あるのは、「被告人」に対する言葉としての「被疑者」です。

 

犯罪の嫌疑が掛けられている者のうち、検察官の処分がまだされていない人のことを、「被疑者」といいます。

「被疑者」が起訴されると「被告人」という呼び名に変わります。

 

マスコミ用語においては、犯罪の疑いのことを「容疑」と呼び、これを掛けられている人を「容疑者」と呼んでいるようです。

 

1の記事と一緒に内容をまとめると、刑事事件においては、

【法律用語】

 「被疑者」―(起訴されると)→「被告人」

【マスコミ用語】

 「容疑者」―(起訴されると)→「被告」

という違いがあります。

 

3 「書類送検」

報道でよく聞く「書類送検」という言葉も、法律の中には出てきません。

言葉を分解すると、「書類」を「検」察庁に「送」ることであろうと推測できます。

 

犯罪を捜査する権限は、警察官、検察官の両方がもっています。

しかし、人数の関係やその他の業務の関係もあって、基本的には警察官がこの役割を担っています。

しかしながら、犯罪について終局的な処分(正式裁判をするかどうか等)を決めることができるのは、原則として、警察官ではなく検察官です。

 

そのため、警察がある程度捜査し、証拠書類が整った段階で、その書類を検察庁に送り、検察の処分を仰ぐことになります。

これは、法律上は、単に「送致」(刑事訴訟法203条,205条等)と呼ばれます。

 

 ~高崎事務所 所長 下山田 聖


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​* 記事の内容については、2020年5月執筆時の法令または情報に基づく一般論であり、個別具体的な事情によっては、異なる結論になる可能性もございます。また、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。
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