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2020年11月10日
コラム
大津市の温泉旅館で、調理場の男性料理長から長年にわたってパワハラを受けていたとして、元従業員の男性らが当該料理長と温泉旅館の運営会社を提訴したとの報道がありました。
請求金額は、慰謝料等を含め約2700万円とのことです。
訴状によれば、料理長から長年にわたって暴力や暴言を繰り返し受けていたこと、仕事上のミスがあれば1回当たり500円の「罰金」の支払を強要され、多い方は一月に1万円ほどの「罰金」の支払を余儀なくされていたとのことです。
「パワハラ」とはよく聞かれる単語ではありますが、当然、法律上の用語ではありません。
この点、厚生労働省が「職場におけるパワーハラスメントとは」というタイトルで指針を示しているところによれば、①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動、③労働者の就業環境が害される、という三つの要素をすべて満たすもの、と定義した上で、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しない。」としています。
また、その類型として、①身体的な攻撃(暴行・傷害)、②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)、③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)、⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)、⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)の6つの類型が列挙されています。
また、事業主の側にも、職場に関する安全配慮義務があるとされ、パワハラを防止するとともにこれに関する理解を深め、広報活動、啓発活動を行うなど、必要な配慮をしなければならないとされています。
パワハラを行っていた本人(個人)のみを訴えるとなると、最終的に勝訴したとしても支払能力に不安があるため、弁護士の立場で請求側から依頼を受けるのであれば、資力が十分にあると思われる事業主をも巻き込んで、被告に加えることが多いでしょう。
ここで、事業主の側からは、職場に関する安全配慮義務の違反はなく損害賠償義務を負わないと主張するため、日ごろの研修、啓発活動等を行ってきたという実績が大切になります。
「パワハラ」があってはならないことは大前提ですが、事業主として、これを十分に防止するに足りる諸活動を行ってきたという実績を積み重ねることで、個々の従業員の「パワハラ」に起因する紛争に巻き込まれるリスクを少しでも減らすことができるのではないでしょうか。
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