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従業員が交通事故を起こした場合の 使用者の責任(弁護士:下山田 聖)

2021年12月16日

コラム

はじめに

業種業態を問わず、業務中に従業員が自動車を使用するケースは多いのではないでしょうか。

今回は、業務中交通事故が発生した場合に、使用者側に発生する責任について簡単に解説します。

交通事故の責任

交通事故は、不法行為(民法709条)として位置づけられます。


民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。

これを素直に読めば、損害賠償責任を負うのは、交通事故の場合には、当該車両を運転していた加害者本人ということになります。

(2)

しかし、会社(運転者以外の者)が責任を問われる類型があります。

それは、①使用者責任(民法715条)と②運行供用者責任(自動車損害賠償保障法〔以下「自賠法」といいます。〕3条)です。

使用者責任とは

民法715条1項は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と規定しています。

(2) 

使用者責任が成立するためには、①被用者の行為が不法行為であること、②使用者と被用者との間に使用関係があること、③被用者の行為が「事業の執行について」行われたことが必要です。

そのため、社有車運転中の事故だけでなく、従業員の私有車運転中の事故であっても、それが「事業の執行」をしているときに発生した事故であれば、使用者責任が発生します。

(3) 

使用者責任が成立する場合であっても、被用者(運転者本人)に損害賠償義務がなくなるわけではありませんので、仮に会社が損害金を支払った場合には、相当な範囲内において、会社が被用者に対して求償請求をすることができます。

運行供用者責任(自賠法3条)とは

⑴ 

自賠法3条は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。

ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。」と規定しています。

これは「自己のために自動車を運行の用に供する者」が責任の主体ですから、交通事故の場合にのみ発生する責任です。

(2)

「自己のために自動車を運行の用に供する者」については、車の所有者が含まれます。

そのため、社有車での事故であれば業務内外を問わず、会社が運行供用者責任を負うことになります。

また、私有車を業務上使用している場合であっても、会社の側に①運行支配(車を使用することについての実質的な支配権)及び②運行利益(その車を使用することによる利益)が認められる場合には、会社が運行供用者責任を負うことになります。

①運行支配については、所有権がある場合に限らず、事実上の支配や間接的な支配がある場合でも認められますし、②運行利益についても金銭的な利益に限らず、社会通念からみて会社のために車の運行がなされているような場合も含みます。

①運行支配、②運行利益の双方とも広く認められる概念であることには注意が必要です。

まとめ

会社としては、従業員が車を利用する際のルールを策定した上で、厳密に運用をしていくことがリスク回避のために必要ではないかと思います。

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2021年9月5日号(vol.260)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。


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