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2024年4月9日
コラム
令和6年4月3日、仙台高等裁判所の裁判官であった岡口基一氏が、弾劾裁判所により罷免の裁判の宣告を受けました。
罷免の裁判の宣告は、裁判官だけでなく、検察官、弁護士及び外国法事務弁護士の欠格事由とされているので、いわゆる「法曹」としての職務ができなくなったことになります。
裁判官は、職務の独立性を保障するために、その身分が手厚く保障されています。
そのため、裁判官がその身分を失うのは、①公の弾劾によるとき、②心身の故障のために職務を行うことができないと裁判されたとき、③(最高裁判所裁判官のみ)国民審査において投票者の多数が罷免を可としたとき、の3つの場合に限られます。
③の国民審査は、衆議院議員総選挙の投票と併せて行われているので、馴染みのある手続かもしれません。
今回、岡口氏が罷免されたのは、①公の弾劾によるとき、を理由とするものです。
弾劾裁判所は、「裁判所」と名前がついていますが、衆議院議員及び参議院議員から各7名ずつ選任された合計14名の「裁判員」により構成されており、国会が設置する独立の常設機関です。
そのため、司法権の主体としての「裁判所」とは組織上の関係はありませんし、弾劾裁判も司法権の行使として行われるものではありません。
なお、弾劾裁判所の事務局には、参議院事務局と最高裁判所からの出向者が含まれているので、人事的な意味でいえば、「裁判所」と一定の関係性を有しているともいえます。
弾劾裁判所により、罷免の裁判が宣告された場合、これに対する不服申立てをすることはできず、直ちに罷免の効力が発生することになります。
戦後すぐに弾劾裁判所が設置されて以降、岡口氏を含めて合計10名の裁判官が弾劾裁判にかけられ、うち8名が罷免の裁判の宣告を受けています。
岡口氏以前に罷免の裁判の宣告がなされたケースは、収賄やストーカー行為等の犯罪を犯したケースが多数ありました。
岡口氏のケースは、SNS上で不適当な発言を行ったことが理由とされており、憲法上の「表現の自由」との問題もあり、罷免となるのかどうか、その結論が注目されていました。
結論の当否の問題は措くとしても、罷免の裁判が宣告されると、裁判官だけでなく検察官、弁護士としての職務を行うこともできなくなるので、その影響は非常に大きいものと言えます。
なお、罷免の裁判の宣告から5年を経過すると、同じく弾劾裁判所に対して、資格回復の請求をすることができます。
岡口氏以前に罷免の裁判の宣告を受けた7名の裁判官のうち4名は、資格回復の裁判によって後に法曹資格を回復しています。
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