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2025年7月18日
コラム
労働災害(以下「労災」)とは、業務中に、労働者がけがをしたり、病気になったりした場合に認定されます。
「労災」と聞いて典型的にイメージされるのは、業務中の事故により負傷した場合だと思います。
しかし、このようにピンポイントで原因となった出来事が特定できない場合であっても、労災と認められるケースがあります。
例えば、重量物を持ち運ぶ業務に長年従事した結果、慢性的に腰痛を発症した場合や、騒音が激しい場所で長期間勤務した結果、難聴を発症した場合などです。
労働基準法75条1項は、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その
費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」とし、同条2項により、この「業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。」とされています。
これを受けた労働基準法施行規則35条及び厚生労働省令により、労災の対象となりうる、いわゆる「職業病」が列挙されています。
また、この厚生労働省令に直接は記載のない疾病であっても、「その他業務に起因することが明らかな疾病」については、労災の対象となり得ます。
この厚生労働省令は、俗に「職業病リスト」と言われています。
職業病リストには1号から11号まであり、それぞれ具体的な疾病が列挙されています。
例えば、身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病(筋肉、腱等の疾患、腰部の疾患等)や、化学物質等による疾病(皮膚疾患、呼吸器疾患等)、人の生命にかかわる事故への遭遇等による精神及び行動の障害・疾病等が記載されています。
また、過労による脳出血、心不全等のいわゆる「過労死」に該当するような疾病も、この職業病リストに含まれています。
個々の疾病ごとに、詳細な認定基準が示されているため、単に「発症したこと」をもって直ちに労災認定を受けることができるというわけではありませんが、典型的にイメージされる「業務中の怪我」以外にも、労災認定されうる疾病があることについては、留意が必要です。
労災と認定されれば、労災保険の対象となり、発生した疾病や本人の状況によって、療養給付、休業給
付、傷病年金等が支給されることとなります。
「職業病リスト」は厚生労働省のホームページで公開されていますので、一度目を通してみるのはいかがでしょうか。
<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2025年5月5日号(vol.303)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。
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